株式会社を作るときの株主の決め方
株式会社を作るときに重要なのは、株主の構成を適切に決めることです。
一人で会社を設立する場合には、自分が株主になるだけなので悩むことはありません。
でも、複数人で会社を設立する場合には、株主構成には気をつけなければいけません。
株式会社の株主の権限
少人数で株式会社を設立する場合、取締役会を設置しないことが普通だと思います。
取締役会を設置していない株式会社の場合、株主は、株式会社の組織、運営、管理その他一切の事項について決議ができる権限を持っています。
例えば、株主総会では、次のようなことを決める権限があります。
- 取締役の選任
- 取締役の解任
- 新株の発行
- 配当の決定
これらの議案は、株主総会で決議をすることができます。
決議するのに必要な条件は下記のとおりです。
- 株主の過半数が出席して
- 出席株主の過半数の賛成
なお、注意していただきたいのは、過半数というのはちょうど半分を含まないということです。
50%ぴったりでは過半数にならないけれど、50.1%ならば過半数になる、ということです。
それでは、いよいよ本題です。
複数人で株式会社を作るときに絶対にしてはいけないこと。
それは、「出資者全員が平等に株式を持つ」ことです。
なぜ、それがいけないのか、少し考えて見ましょう。
2人で株式会社を作るから株式を50%ずつ持つと・・
仲のいい吉田さんと武田さんは、2人で株式会社を作ることになりました。
吉田さんは営業担当。武田さんは経理等裏方を担当することにしました。
2人の会社だから、ということで、株はちょうど半分づつ持つことにし、2人とも取締役に就任することにしました。
最初のうちは2人で相談しあって、仲良く会社を運営していました。
2人で合意して会社の意思決定をするのでスムーズに会社の運営もできています。
まさしく順風満帆を絵に描いたような光景でした・・
ところが、1年も経つと段々、事業の方向性に食い違いが出てきました。
顔をあわせるたびに喧嘩ばかり。
もう、顔を見るのもイヤになり、ほとんど顔を会わせることもなくなりました。
ただ、そうは言っても、会社がある以上、業務をしていかないといけません。
幸い、2人の業務分担は明確に決まっていたので、2人は、淡々と、自分達の役回りはこなしていました。
そんなある日、ついに株主総会の日がやってきました。
今年は、取締役の改選期なので、取締役候補者を定めることになりました。
さて、ここで、ふと気づきました。
二人とも株式を50%しか持っていないことに。
お互い、相手を取締役にするのはイヤです。
もう、このころには、相手の顔を見るのもイヤなくらい仲が悪くなっていますので、自分だけが取締役になって相手を追い出し、会社を自分の手で運営したいと思っています。
でも、株式を50%しかもっていないため、相手の協力が得られないことには株主総会では、何も決められないのです。
結局、株主総会では、取締役を決められないまま、会社を運営せざるを得ない状況になってしまいました。
結局、吉田さんは、自分一人で別会社を作って、そちらで業務をすることになってしまいました・・
営業マンがいなくなった会社は、もう存続できません。元の会社は自然消滅することに・・・
会社を設立するなら、誰かが株式の過半数を持つのがおすすめ
こういう自体を防ぐために、一番効果があるのは、株式を誰かに集中して持たせておくことです。
少なくとも誰か一人で過半数を持つのがおすすめです。くどいようですが、50%ちょうどではダメです。50%を1株でも超える議決権を持ってください。
そのようにして、会社のトップに立つ人を一人決めてください。
これが一番重要です。
誰かが過半数の株式さえ持っていれば、通常の業務の範囲内では、問題は出ません。
取締役が気に入らなければ解任できますので、方針が食い違っても最悪の事態は防げます。
ただし、下記のような会社の重要なことを決めるためには3分の2を超える議決権が必要になります。
- 定款(会社の内部的な約束毎を定めた文書)の変更
- 合併
- 事業譲渡
ですから、もし、トップになんでもかんでも決められるのはイヤ、という場合には、トップ以外の人が、3分の1以上の議決権を持つようにバランスを取ってください。
そうすれば、会社にとって特に重要な事項は、トップの一存では決められなくなります。
取締役になるか従業員になるか
さて、株主構成を決めたら、次に誰が取締役になり、誰が従業員になるかを決めなければいけません。
ここで、おすすめのパターンはできれば取締役を2人にして、残りの人を従業員にする、というパターンです。
取締役が1人だと、その人が死亡したときに取締役が不在になってしまい、業務運営に支障がでる場合があります。
また、特定同族会社の役員報酬の損金不算入の規定等、税務上も不利益な取り扱いを受けるケースがあります。
親族関係でない2人が取締役になれば、少なくとも、こうした不利益はなくなります。
それでは、他の人が従業員になったほうがいい理由は何か?というと、税法や補助金の面でメリットがあるからです。
税法的には、役員報酬は期を通じて変更できませんが、従業員の場合には、給与改定や賞与の支給が自由にできます。そのため、従業員がいたほうが、利益に応じた機動的な調整がしやすい、という面があります。
また、補助金については「従業員がいる場合に受給できる」補助金というのが結構あります。そのため、役員のみで起業してしまうと、こうした補助金を受け損ねる可能性があります。
従業員を1人以上雇用した形にすることで、得をするケースも多いのです。
このようなことを自分一人で解決できますか?
もし、会社を設立するのなら、公認会計士等の専門家に任せて、あなたは本業に専念することをおすすめします。
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