消費税は税理士でも判断を間違えるほど難解です。
消費税は、税理士が最も間違いやすい税として有名です。
というのは、消費税は、納税者にとって選択肢が多く、どの選択をするかで、消費税額が大きく異なってくるのです。しかも、その選択ミスのせいで後で取り返せない損失を被ってしまうケースが多いのです。
特に、会社設立直後は、難しい判断を迫られる場合が多いので注意が必要です。
今回、話をしようと思うのは下記の2つです。
- 設立時資本金
- 消費税の課税方式
消費税の観点からは、設立時の資本金は1,000万円未満にすべき
まず、会社設立時の注意点ですが、設立時の資本金は1,000万円未満にすべきです。
なぜなら、資本金を1,000万円未満にしておくと、設立第1期、第2期について消費税の納付義務を負うかどうかを自分で選択できるようになるからです。
少し具体的に説明していきます。
消費税の課税方式には次の3つがあります。
- 免税事業者になる(消費税の納税義務を負わない)
- 簡易課税を適用する課税事業者になる
(消費税の納税義務を負うが、簡易的な方法で計算する) - 原則課税を適用する課税事業者になる
(消費税の納税義務を負う。原則的な方法で計算する)
設立時の資本金を1,000万円以上にしてしまうと、その法人は設立第1期から消費税の納税義務を負うことになります(上の1は選べなくなります)。
でも、設立時の資本金が1,000万円未満ならば、設立第1期、第2期について、上の3つの方式のどれでも選択できるのです。
当然、取り得る選択肢が増えれば、節税の余地が広がります。
なお、これは株式会社・合同会社いずれも共通ですので、合同会社であっても資本金を1,000万円未満にしておけばOKです。
会社設立第1期末までに消費税法上決めなければいけないこと
さて、それでは、資本金を1,000万円未満にして会社を設立した!として、設立第1期末には、どのような選択をしなければいけないのでしょうか?
あなたがやらなければいけないことは、消費税の課税方式を選ぶことです。
(簡略化してもう一度書いておきます。)
- 免税事業者になる
- 簡易課税を適用する
- 原則課税を適用する
設立第1期目で現物出資等がないことを前提とした場合、それぞれの方法での消費税の概算額は次のようになります。
- 1.免税事業者
- 0円
- 2.簡易課税
- 売上の金額×(50%~90%)×5%
※売上の金額に掛ける率は、業種により変わります - 3.原則課税
- (営業利益+人件費-固定資産期末残高-在庫期末残高)×5%
※設立第1期の一般的なケースを想定した概算です。
参考としてのみ使ってください
ぱっと見ると、免税事業者が有利に決まってるだろ!と思われるかもしれませんが、そう簡単にはいきません。
実は、3番目の原則課税の場合、計算した結果がマイナスになったら税金が還付されてくるのです。
ですから、利益が出すぎて困る(笑)という場合はともかく、もし、利益水準が小さい場合(あるいは損失が出る場合)には、原則課税を選択すると、税金が還付されてきて一番有利な結果になる、ということがあり得るのです。
消費税は、今年+来年も見据えた選択をしないと危険
消費税の選択で注意しないといけないのは、下記の2点になります。
- 設立した期を除いては、期が始まる前までに消費税の課税方式を決めなければいけない
- 消費税の課税方式は、一旦選択したら、その後2年間は継続しなければいけない場合が多い
1つめの点ですが消費税の課税方式を決める場合には、翌期の売上・利益や設備投資の予測に基づいて、選択をしなければいけないのです。
ですから、予測と実績に乖離があると、思わぬ損失を被ることもあります。
次に2つめの点ですが、消費税の課税方式の選択を2年間継続しなければいけないことを前提にすると、翌期の課税方式を選択するために、翌々期の売上・利益や設備投資予測も勘案しながら、課税方式の選択をしなければいけないケースがあるのです。
例えば、設立第2期で簡易課税方式を選択しようとする場合を考えてみましょう。
この場合は、設立第1期の売上高が5,000万円以下であることを前提にすると、その次の期である設立第3期でも簡易課税方式を選択しなければいけなくなります。
ですから、この場合には第2期、第3期をともに簡易課税方式を選択した場合に有利になるのか?という観点から税額シミュレーションをしなければいけないのです。
実際、第2期だけで見れば簡易課税が有利だけれど、第3期は簡易課税だと不利になる場合だってあり得ますので、かなり難しい判断を迫られることになります。
このように、消費税の課税方式の選択は、とても難解です。
もし、上で書いたような判断を一人で行う自信がなければ、税理士等の専門家に相談することを強くおすすめします。
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