会社の決算期は自由に決められます

会社の決算期というと3月31日というのをイメージされる方も多いと思いますが、実は、会社の決算期はいつでも自由に設定することができます。

6月30日、9月30日、12月31日等3月以外の月末でも構いませんし、必ずしも月末である必要すらありませんので、2月20日とか、9月5日などという決算日でも構わないわけです。


ちなみに、会社の決算期の決め方ですが、定款(ていかん)という、会社内部の約束毎を決める書類に「当社の決算日は毎年X月X日とする」と定めるだけでOKです。

これで、会社の決算日を決めることができます。


そこで、問題となるのは、いつを決算日にすればいいのか?ということです。

決算日を決めるにあたっては、いくつか、考慮すべきポイントがあります。

  1. 資金繰りの観点
  2. 消費税の特例の観点
  3. 業務負荷の観点
  4. 年次決算書の見た目の観点
  5. その他の観点

以下、順番に見ていこうと思います

資金繰りの観点からは決算日をいつにすべきか?

会社を運営していると、資金が出ていく月・日は、だいたい決まってきます。

法律で定められていたり、会社・業界の性質等により、特定の月に資金が必要になる場合を考えてみると、次のようなものがあることがわかります。

法令で定められた納付期限
法人税等の確定納付
決算日から2ヶ月以内
(例1)3月決算会社ならば5月31日に納付
(例2)6月決算会社ならば8月31日に納付
(例3)9月決算会社ならば11月30日に納付
法人税等の中間納付
決算日の6ヶ月後から2ヶ月以内
(例1)3月決算会社ならば11月30日に納付
(例2)6月決算会社ならば2月末日に納付
(例3)9月決算会社ならば5月31日に納付
雇用保険料の支払い
5月20日
預かり源泉徴収税の支払い
特例納付の場合には7月10日、1月20日

その他の資金が出ていく要因
従業員への賞与(ボーナス)
一般的には6月、12月頃に支払いが行われる
借入金の返済
毎月返済でない場合には、返済月に多額の支出が発生します
売上に季節変動がある会社
一般的に売上が上向く時期の直前・直後あたりが資金繰り的には一番厳しくなります
官公庁からの支払いに頼っている会社
入金は3月直前に集中する傾向があるので、年末あたりは資金繰りが苦しくなるかもしれません

このような各種資金要因を勘案したうえで、決算期を決めると、資金繰り的に楽になります。

できるだけ支払いが重ならないように決算期を決めてください。

消費税の特例の観点

資本金1,000万円未満で会社を設立すると、会社設立後最長2年間は消費税の納付義務が免除されます。

というのは、消費税の納税義務は、大ざっぱには2年前の売上高を基準にして決定されるからです。

会社設立後2年間までは、2年前の売上高が存在していないため、例外的に、消費税の納付義務が免除されているのです。

利益が出ている会社で設備投資が少額の場合、消費税の納付義務が免除される=節税、となるケースがほとんどですので、できるだけ消費税の納付義務が免除される期間を伸ばすほうが得になります。


上で書いたとおり2年前の売上高がない限りは消費税の納付義務は免除されます。

ですから、一般的なケースを前提にすると、消費税の納税義務が免除されている状態をできるだけ長くするためには、1年目の決算期を1年間にして、設立日の1年後を決算日にすることが望ましい、ということになります。

業務負荷の観点からは決算日をいつにすべきか?

決算前後には、業務負荷が集中します。

例えば、原則として決算日においては在庫について一斉棚卸を行わなければいけません。

また、決算日後には、1年間の売上高の集計、未払費用の計上等を始めとする年次決算作業も行わなければいけません。

もし、決算を会計事務所に全部任せてしまうとしても、会計事務所とのやりとりでどうしても時間は取られてしまいます。

このような作業を本業が忙しい時期に行わなければいけないとしたら、大変ですよね?


ですので、できるだけ、本業が忙しくない時期に決算期を設定すべきなのです。


また、棚卸作業では、実際に在庫の数を数えます。ですから、1年間で在庫が少ない時期に決算期を設定すると、棚卸が楽に終わります

このようなことも考慮に入れながら、決算期を決めてください。


年次決算書の見た目の観点

売上等に季節変動がある会社の場合、各月毎で、決算書の見た目が全然違う、ということがあります。

例えば、アパレル関係の会社で、春夏ものの服を1月に大量に仕入れ、2月~7月にかけて販売していく、という場合を想定してみましょう。

この場合、1月の決算でみると、売上規模の割に在庫がものすごく多くなってしまうことが想定されます。

ちなみに、在庫が多い、ということは、多額の仕入代金が必要になりますので、現金・預金が通常月より少ないか、あるいは、借入金や買掛金等の負債が通常月よりも多額になっていることが通常です。


もちろん、業界事情を知っている人が、この決算書を見れば、「1月だから在庫が多いんだよね」で終わるところです。

でも、何も知らない第三者が、この1月の決算書を見ると、

  • 規模の割に資産が多い。きっと不良資産がいっぱいあるんだろうな・・
  • 借入金が多い割に現金が少ない。本当に返済能力があるんだろうか?

などなど、あらぬ疑念を招いてしまう可能性があります。

特に、銀行にこのような疑念を持たれてしまうと、借入で不都合が出ることもありますので、絶対に避けたいところです。

最近、銀行は過去何期分かの決算書を入れることで、融資の可否を判断するスコアリングと呼ばれるシステムを導入しているところもあります。このようなシステムに読み込ませる場合、決算書のタイミングを考慮して補正を加えるといった作業はしないと思いますので、見た目の悪い決算書は致命傷になりかねません


こういう疑念を抱かせないためにも、できるだけ「決算書の見た目が綺麗な時」を決算月としたほうが望ましいのです。

どういう決算が綺麗なのか?は、一概には言えないのですが、大ざっぱに言えば、現金・預金以外の余計な資産・負債が計上されていないのが綺麗な決算書と考えておけば、間違いはないのではないかと思います。


その他の観点

上記で挙げた以外にも考えなければいけない事項、というのがあります。

例えば、情報収集の観点です。

世の中に出回っている情報は、ほとんどが3月決算を前提とした情報です。

ですから、3月決算以外の決算期にしてしまうと、税法・会社法等をどのように適用すればいいのかが簡単にはわからない、ということもあり得ます。

特に、自力で決算・申告をしよう、という考えを持っている場合には、3月決算にしておかないと手も足も出ない、ということになりかねませんので、ご注意ください。


また、会計事務所に決算・申告をお願いする、という場合に、夏場(7月~9月あたり)を決算期にしておくと、決算の時期が会計事務所の閑散期にあたるため、3月決算よりも手間暇をかけて作業をしてくれる可能性があります。

ですから、会計事務所に依頼予定の場合、決算期に迷ったら夏場を決算期にする、という選択は充分にあり得ると思いますよ。


結局、決算期をいつにすればいいの?

結局、決算期をいつにすればいいのかは、上で書いたようなことを考慮しながら総合的に判断していく必要があります。

もし、判断に悩んだら、公認会計士・税理士等の専門家に相談されることをおすすめします。

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